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近況


2021年
7月25日
久しぶりの更新。まとめて報告。
h-principleに関する論文をarxivに上げた。
Gromovの言う可撓(flexible)層とは、あるモデル圏(またはその一般化)の内部におけるfibrant対象と見なせるという話。
Engel同相群に関する論文の修正が終わったので再投稿中。
今年度中に卒業したいので、エタール亜群の論文も修正して再投稿を検討中。
最近はなんとなく量子力学の勉強をしていた。 間違いもあると思うけど、とりあえず年表。

1925年- Heisenbergの行列力学
1926年- Schrödingerの波動力学
1932年- John von Neumannがヒルベルト空間形式の量子力学として統一 (和訳)
→古典的数理量子力学の完成
1941年- Gelfandによる可換$C^\ast$環の特徴づけ
1943年- Gelfand-Neumarkによる非可換$C^\ast$環の特徴づけ
→代数的量子力学の開始、およびNeumann形式の量子力学との統一
1985年- $C^\ast$圏の導入と埋め込み定理の証明(Gelfand-Neumarkの圏化)
2003年- Coeckeの図式
2004年- 上記結果の圏論的定式化
→圏論的量子力学の開始
2008年- HeunenによるHilbert圏の導入と埋め込み定理の証明
→圏論的量子力学とNeumann形式の量子力学の統一

圏論的量子力学は量子計算を記述するために導入された。
CoeckeとKissingerの『圏論的量子力学』(川辺治之[訳])という分厚い本があるが、こちらは数学者向けではない。
数学者が圏論的量子力学を学ぶなら、Heunenの『圏論による量子計算のモデルと論理』(川辺治之[訳])がよい。
(どちらも同じ人が訳していることに今気づいた。)
Hilbert圏は淡中圏になると思うけど、Picard-Vessiot理論と量子力学の関係はよくわからない。
可換$C^\ast$環のGelfand-Neumarkの定理の証明は、 Iosif Petrakisのwebページ にある『Introduction to Banach Algebras and the Gelfand-Naimark theorems』が個人的にはわかりやすかった。
Zariski位相との関係も述べているので、代数幾何を少し知っている人向け。
Atiyah-MacDonaldの『可換代数入門』(訳:新妻弘)と並べて読むとよい。
一般のBanach環に対してGelfand表現は存在するけど、それが同型になる(極大スペクトルの弱位相がZariski位相と一致する)のはBanach環が$C^\ast$環になるときだけ、らしい。
量子力学の解釈論は、コペンハーゲン解釈よりも多世界解釈のほうがしっくりくる。
状態を観測すると純粋状態へジャンプするというのはやはり不自然だと思う。
それよりも、観測された状態は純粋状態の線形和で表現されて、以降互いに干渉しなくなるという方が美しい。
また、多世界解釈はおそらく様相解釈のKripkeモデルとも考えられると思うが、こちらは勉強不足でよくわからない。
(ゲート方式の)量子コンピュータ実現のためのハードルは、量子ビットと量子ゲートの実現にあるらしい。
量子ビットの実現はいくつか考案されているが、超伝導を用いたりとスケールが大きい。
量子ゲートの実現はよくわからない。
古典的なビットが電圧の高低で実現され、工学的にもトランジスタで安定的に取り扱えるのと比べると、今のところ量子コンピュータは全然身近ではない。

10月16日
勉強したことを更新した。
ひとまずFibration structure for Gromov h-principleの内容は完成した。
ホモトピー引き戻しはホモトピー圏上の引き戻しではないらしい。
投稿論文の返事が返ってこない。 今年度中の卒業は期待しない方がいいかも。

10月27日
遠藤先生に相談したところ、卒業要件としての査読の返事が遅くなっても多少は融通が利くようなので、 とりあえず今は卒業する予定で手続きを進めている。
層理論的ホモトピー原理は距離空間と相性がよさそう。
全く詳しくないが、Alexandrov幾何への応用はないだろうかと考えている。 例えば、Nashの埋め込み定理を一般化することはできないだろうか。